濱 健夫

※インタビュアー:I

濱健夫1

I:それでは、早速ですがインタビューの方をさせていただきます。

濱:よろしくお願いします。

 

―研究内容について

I:まず研究内容について教えて下さい。

濱:湖・河川・海について研究していまして、なかでも炭素・窒素・リンに着目していて、海洋での物質循環を広く研究しています。分野としては、海洋水圏生態学で、14年目になります。湖、主に河川の生物、海洋の微生物、植物プランクトンやバクテリア等を対象にしています。物質でいうと、C・N・Pの循環に関する研究ですね。

 

I:主なフィールドはどこですか?

濱:一番多いのは筑波大の実験センターがある下田(静岡県)ですね。そこで注目しているのは、大型海藻です。湖の研究をやる場合のフィールドは霞ケ浦ですね。他には、気象庁の気象研究所と共同研究をしており、気象庁の測船が赤道付近まで行き、年4回の四季を通じて観測しています。

 

I:幅広く見ているのですね。

濱:よく生物科学が専門ですかと聞かれますけど、私自身は地球科学・化学が専門だと思っています。うん、地球と生物が半々といったところでしょうか。

 

I:主に微生物を見られているということですけども、その中でもどういった種類を 扱っているのですか?

濱:有機物を作る側の植物プランクトンと、それを分解する側のバクテリアの両方が 研究対象です。

 

I:バクテリアについてもっと詳しくお聞かせください。

濱:はい。バクテリアには付着性と遊泳性がありまして、バクテリアだけが持っている枝分かれした脂肪酸を詳しく調べています。植物プランクトンやバクテリアというと、顕微鏡で観察すると思われがちですが、我々はほとんど見ませんね。医学分野の進歩でレーザーによる観察技術が発達しまして、具体的にはレーザー光を当てて、その波長を見ています。とても識別しやすく、時間も数分間と短いですし、これによってグループ分けが容易になりましたね。まあ、私たちの研究室では海水を使うので。メーカーには嫌がられますが(苦笑)。

 

I:植物プランクトンというと顕微鏡のイメージがありましたが、レーザーなのですね!意外でした。

濱:ピッピッピッて感じで。学生にとってそれが良いのか分からないですし、全ての基本は顕微鏡かなと思いますけど。

 

I:濱先生の研究分野は、基礎から応用までが含まれるのでしょうか。

濱:はい。両方含みますね。現在、海洋酸性化が注目を集めています。二酸化炭素を出す時に水素イオンを出すのですが、それでpHが低下することを海洋酸性化と言います。この海洋酸性化を下田臨界実験センターで実験的に再現しています。気体の二酸化炭素を無理やり海水中に送り込んで、酸性化した未来の海を作っています。pHが0.3~0.5程度低下した状態で植物プランクトンなどの様子を調べています。その結果、海洋生物は意外に耐性がありそうなことが分かってきましたね。

 

I:へぇー面白いですね。今、分かっている範囲で過去からどのくらいpHが変化しているのですか。

濱:産業革命以降はどんどん下がっていますね。面白いのは、海が二酸化炭素を吸収するのは誰でも知っていましたが、海洋酸性化というのは最近まで認識されておらず、ここ10年くらいで一気に注目されはじめました。今から思うと、なんでここに気づかなかったのだろうと思うかも知れませんが、環境問題っていうのは基本的にそういうものですよね。

 

―研究を始めたきっかけ

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I:濱先生が研究を始めたきっかけについて教えて下さい。

濱:植物プランクトンに興味があり、小学生のころから顕微鏡を除くのが好きでした。そのまま大学まで続き、藻類の系統学や生態系を研究しつつ、教員免許を取得していたので、当時は教員になるか研究者になるか迷っていましたね。大学4年生のころに進学したいと思い大学院へ進学しました。大学院では研究者になりたいと思い、さらに研究を続けていました。私の専門は地球化学や有機物なのですが、心の中では生物に興味があったので、そのギャップに当初は戸惑っていました。

 

―研究の面白さ

I:濱先生にとっての研究の面白さって何ですか。

濱:気づかない現象やプロセスが観測で出てくることです。それが「やったー!」という達成感につながり、とても楽しいです。論文が苦痛で仕方がないと思う時も少なくありませんが、面白い結果が得られた時は、論文を書いていても面白いですし、学会発表をするときに「どうだ!」という気持ちになりますね(笑)。

 

I:達成感、というものでしょうか。

濱:まあ、苦しいことも多く、学生さんにはなかなか伝わらないですけどね(苦笑)。

 

I:行き詰ってしまった時とか苦しい時はどうしていますか?

濱:ちょっと、研究から離れてみます。まぁ離れすぎて忘れることも多いですけど。人と話し合ったりするのも良いですね。学生さんとディスカッションして、リフレッシュしています。

 

I:濱先生の研究室について教えて下さい。

濱:今年度はD3が1名、M2が3名とB4が4名。この数年間では1番少ないですね。男子が2人、女子が6人で女性が多いですが、今年が特殊で例年は半々ぐらいですかね。毎年、Dはいますね。外部からの学生さんは半分ぐらいで、他分野から来られる学生さんも結構多いです。

 

I:研究室の学生さんはどんな人が多いですか?

濱:まあ、色々な人が多いですね。今年は男子が大人しくて女子が元気な人が多いですね。時々、気象研究所でゼミを行ったりするのですが、学生さんはそこで結構鍛えられていると思います。ゼミは週1で論文紹介をします。学会前は発表練習が加わり週2になりますね。学会は、海洋学会が春・秋にあり、国際学会が2月にあります。

 

I:研究室の学生さんはどのようなところに就職されていますか?

濱:博士課程を修了した学生さんのうち一人は国立環境研究所に就職しました。他には、国研等でポスドクや非常勤の研究員等をしています。修士課程修了生は、公務員や企業に就職される方が多いですね。必ずしも水関係ではなくて、むしろ企業は水関係でないのが7~8割ぐらいいますね。最近の博士課程修了生は、原研、放射能関係もいます。

 

I:濱研究室を希望する学生さんへのメッセージをお願いします。

濱:海の中で起こっていることのイメージができることと、興味を持つこと。そして、積極性が必要。海のイメージができる人は、理解が速い人が多いですね。特に分野外から来られる学生さんには、海の中をイメージして欲しいです。

 

I:最後に一言お願いします。

濱:繰り返しになるけど、多分野の現象にも興味を持って、積極性のある学生にぜひ来て欲しいなと思います。日頃から心掛けしないと人は怠けてしまうのでね。

 

I:本日は大変貴重なお時間をいただきありがとうございました。

濱:ありがとうございました。